75年間の追跡研究でわかった幸福と健康を高める一つの方法
「人の悩みの90%は人間関係である」なんてよく言われますが、このことにまつわるある研究があります。
ハーバード大学が進めている成人発達研究の調査としてヴェイラントらが行ったもので、ハーバード大学卒の男性たちと、ボストン育ちの貧しい男性たち、この2つのグループ(約700人)の追跡調査をしました。
この研究のすごいところは、その追跡期間です。
なんと、75年にわたって対象者の幸福度と要因について調べていったのです。
この長い研究の結論は、こうでした。
「私たちの幸福と健康を高めてくれるのはいい人間関係である」
家柄、学歴、職業、家の環境、年収や老後資金の有無といったことではなく、人間の幸福度、健康と直接的に関係があったのは人間関係だったという結果になったのです。
しかも、友人の人数は関係なく、たった一人でも心から信頼できる人がいるかどうかが重要だということがわかりました。
対人関係がうまくいっている(信頼できる人がそばにいる)状況では、緊張がほどけて脳が健康に保たれる、心身の苦痛がやわらげられる効果が見られた一方、孤独を感じる人は病気になる確率が高く、寿命が短くなる傾向も見られました。
つまり、「お金持ちになれば幸せ」であるとか、「ステータスの高いパートナーがいれば幸せ」であるとか、そんなことは一切ないということなのです。
これに関連して、愛知医科大学のマツナガらの実験を紹介しましょう。
18〜25歳を対象にあるストーリーを読んでもらい、その反応(唾液に含まれるセロトニンというホルモンの量)を調べるというものです。
このストーリーは架空のライフイベント、人間関係などが書かれたもので、主人公になりきって追体験できるようになっています。
ライフイベントの内容は「ポジティブ」「ニュートラル」「ネガティブ」の3つ。
人間関係も同じく「ポジティブな友人」「ネガティブな友人」「友人がいない」という3つのパターンで、その組み合わせが参加者によって異なります。
この結果、参加者の幸福度をもっとも高めたのは、「ポジティブな友人」の存在だったことがわかりました。
ライフイベントがネガティブなものであっても、明るくハッピーな友人がいる人は幸福を感じる傾向にある、という結果になったのです。
一方で、ネガティブな友人がいた場合、友人がいない場合よりも幸福度が下がる傾向も見られました。
人間は、とても共感能力が高いのです。
それが幸福な気持ちであっても、不安や怒りなどのネガティブな感情であっても、相手が発しているものをそのまま受け取ってしまい、同じような感情を抱いてしまうことがわかっています。
つまり、ネガティブな人ではなく、ポジティブな人と接していった方が人生はポジティブな方向に向かいやすいということです。
現代社会では、人間関係でもメリット・デメリットが重視されがちで、「つながっておくといいことがありそう」だから付き合う、なんていうこともあるかもしれません。
また、見栄や世間体を重視した付き合いなどもあるかもしれません。
ですから、よけいなことを考えずにポジティブな友人と一緒にいる。
そして、自分自身もポジティブでいることに努める。
そうして、幸福度の高い人間関係をつくってみてください。
冒頭の研究の結果を考えれば、人生の最終的な勝ち負けなんていうのはないも同然です。
財産も、恋愛も、肩書も、ステータスという一瞬の間不安を遠ざけるものに過ぎず、本質的には問題を解決してくれないのです。
【まとめ】
幸福にもっとも影響を与えるのは人間関係。
そして、いい人間関係にはポジティブな態度が重要である。
参考:最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方(堀田秀吾)より抜粋